たかが近視と侮ると危険、失明や視力障害にいたる可能性のある『強度近視』!
日本の成人の強度近視人口は6~8%と非常に多く、白人の数倍です。強度近視が怖いのは、単にメガネやコンタクトレンズの度の問題ではなく、緑内障、白内障、網膜病変など目の病気が起こりやすい難しい目だからです。
強度とはどれくらいをいうのでしょうか? 一般の方に近視の強さをたずねると、裸眼視力で答える方がほとんどですが、それは正確ではありません。医学的には近視を矯正するレンズの度数(ディオプトリーという単位、Dで表記する)で表現します。
ディオプトリーはレンズの度数を表す単位で、近視でも遠視でもない正視を0とし、近視はマイナスの数字になります。日本では、マイナス3D未満を軽度近視、マイナス3D以上~マイナス6D未満を中等度近視、マイナス6D以上を強度近視とすることが多いようです。また、マイナス8Dを超えた強度近視が原因で、目の障害や失明に至ることを病的近視と呼びます。
病的近視のレベルになっているかどうかは、次の方法で自己チェックしてみてください。
やり方は簡単です。人さし指を立てて指の腹を自分に向け、そのまま顔に近づけます。裸眼で、目を細めずに見たとき、指紋まではっきり見える位置が眼前12.5センチであればマイナス8D。それより近づけないと見えない場合、病的近視になっている恐れがあるのです。
強度近視の人は正常な人に比べ、緑内障の発症率が3倍以上!
実は、強度近視には定まった診断基準がありません。マイナス6D以上を強度近視にするというのは目安であり、眼科ではほかの検査も行い診断します。
その一つが眼軸長[(がんじくちょう)=眼球の前後方向の長さ]の測定です。成人の眼球は直径24ミリ弱の球形ですが、強度近視の目は眼軸が伸びてラグビーボール状になっていることが多いのです。強度近視とされるのは、一般に27ミリ以上で、長い場合は40ミリの人もいます。
眼軸長がなぜ伸びるのか、はっきりわかっていません。強度近視になり、眼軸が長い状態で何年も経つうちに、眼球の後部がぽこっと飛び出す「後部ぶどう腫」を生じることがあります。
また眼軸長が長くなることで、網膜が突っ張って網膜剝離(はくり)が起こったり、網膜の中心部にあたる黄斑部が伸びて合併症が起きたりします。黄斑部に出血が起きると、突然の視力低下やものがゆがんで見えるなどの症状が起こります。このレベルなると「病的近視」と呼ばれ、強い近視が原因で目の障害や失明に至ることもあるのです。
病的近視の合併症としては、
◯黄斑部出血
高齢者に多い「近視性脈絡膜(みゃくらくまく)新生血管」と、20~40代に多い「単純出血」が原因になります。
「近視性脈絡膜新生血管」は、脈絡膜が引き伸ばされてもろい血管が新しくでき、網膜の下に伸びて増殖する病気です。物が歪んで見える「変視症」などが起こり、進行すると重篤(じゅうとく)な視力低下にいたります。
「単純出血」は、脈絡膜が引っ張られて薄くなり、わずかに眼底に出血するものです。出血場所によっては、見たいところが見えない「暗点」や視力低下が見られます。数カ月で自然に改善することが多いのですが、その後、脈絡膜新生血管を起こすこともあるので、経過観察がすすめられます。
◯近視性牽引性黄斑症
強度近視により眼球の壁が引き伸ばされた状態で黄斑の網膜にすきまができたりはがれたりして、視力が低下します(黄斑分離や黄斑剥離)。進行して中心窩に孔(あな)があいて、網膜剥離(もうまくはくり)が悪化することもあります。
◯視神経症
眼球の伸展や眼圧の変化などで視神経やその神経線維が障害され、視野障害の原因となります。
◯緑内障
もっとも注意が必要なのは緑内障です。強度近視の人は発症率が3倍以上高いというデータがあります。早期は自覚症状が乏しく、視野がほとんど欠けた末期に見つかることも多いので、社会生活への影響が強く出ます。早期発見できれば眼圧を下げる点眼薬で進行を緩やかにすることもできるので、症状がなくても年1回は眼科で定期検査を受けることをおすすめします。
合併症として比較的多いのは、近視性牽引黄斑症、視神経障害、黄斑部出血の三つです。いずれも失明にいたる危険があります。
近視は、近視の原因である生活習慣を改善せずほうっておくと、軽度近視から中度近視へと悪化するだけです。メガネやコンタクトでは、近視の根本的な原因の解消にはなりません。あらためて近視が様々な病気を引き起こす危険性を認識し、できるだけはやく対策を講じることが重要です。
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